地元25年のドライバーが、車で回れる順にご案内します
長崎は、映画やドラマの撮影がとても多い街です。坂、港、教会、路面電車、そして軍艦島。ひとつの街の中にこれだけ違う顔があるので、作品の側から選ばれやすいのだと思います。
ただ、ロケ地めぐりにはひとつ落とし穴があります。
「ロケ地」と「舞台」は、同じではありません。実際にカメラが回った場所と、物語の設定になっただけの場所。この2つが混ざって語られていることが多く、現地まで行って「あれ、ここで撮ったわけじゃないの?」となってしまう方がいらっしゃいます。
この記事では、実際に撮影された場所と、物語の舞台・モデルになった場所をはっきり分けてご紹介します。そのうえで、長崎市内で車で回れるものを主役に、少し遠い場所は行き方だけお伝えします。
いちばんわかりやすいのが、軍艦島と『007 スカイフォール』です。
2012年の『007 スカイフォール』には、廃墟の島「デッド・シティ」が登場します。これは軍艦島をモデルにしたもので、日本でも大きな話題になりました。ところが実際の撮影は軍艦島では行われていません。安全上の理由で断念され、イギリスのピンウッド・スタジオに建てたセットで撮影されています。エンドクレジットには、ロケハンに協力した長崎市長への謝辞が残っています。
もうひとつが、外海と『沈黙』です。遠藤周作の小説『沈黙』(1966年)の舞台は、長崎市の外海地区。2016年にマーティン・スコセッシ監督が映画化しましたが、この撮影は台湾で行われました。外海は小説の舞台であって、映画のロケ地ではありません。
| ロケ地 | 舞台・モデル地 | |
|---|---|---|
| 意味 | 実際にカメラが回った場所 | 物語の設定・風景のもとになった場所 |
| 長崎の例 | 軍艦島(進撃の巨人・海に眠るダイヤモンド) | 外海(沈黙)、軍艦島(007 スカイフォール) |
| 立ったときの感じ方 | 「ここに機材が入ったのか」 | 「この風景があの物語を生んだのか」 |
どちらも「行っても意味がない」という話ではありません。むしろ逆で、その場所が持つ空気が作品を生んだわけですから、価値はまったく落ちません。ただ、知って行くのと知らずに行くのとでは、立ったときの感じ方が変わります。
▶ 遠藤周作『沈黙』の舞台を巡る文学ツアーで、外海の見どころを詳しくご紹介しています。
いま長崎で最も問い合わせが多いのがこの作品です。舞台は端島=軍艦島。長崎市内では新地中華街、稲佐山、浦上天主堂、長崎水辺の森公園、そして野母崎が登場します。
車で回るうえで押さえておきたいのが野母崎です。長崎半島の先端で、海の向こうに軍艦島を望めます。上陸ツアーは天候で欠航することがありますが、野母崎からの眺めなら車で行けて、天気に左右されにくい。「軍艦島を見たいけれど船が心配」という方に、私がよくご案内する場所です。
軍艦島そのものへ渡る場合は、常盤桟橋などから上陸ツアー船が出ます。タクシーは桟橋までのお送り・お迎えになります。
長崎市の中心部だけで撮られている、めずらしい作品です。眼鏡橋、思案橋横丁、石橋電停、相生地獄坂、魚市橋、中通り商店街、長崎水辺の森公園。
地元の人間からすると「よくこんなに市内だけで撮ったな」という布陣で、歩いて回れそうに見えて実は坂で分断されているエリアが多い。相生地獄坂は、名前のとおりの坂です。
『遠い山なみの光』は稲荷山、淵神社、旧魚の町団地。淵神社は、稲佐山ロープウェイの乗り場のすぐそばです。
『長崎 -閃光の影で-』は山王神社。片方の柱だけが残った「一本柱鳥居」で知られる場所です。
実写版の撮影が、軍艦島の立入制限区域で特別許可を得て行われました。
ここも裏話が面白い現場です。島には電気も水道もトイレもありません。そのため撮影隊は発電機などの大型機材を船で運び込むところから始めることになり、その搬入だけで半日かかったと記録されています。トイレも島に設置するところからでした。上陸したスタッフは110人を超えたと伝えられています。
ただし観光の上陸ルートからは見学できない区域が中心なので、「撮影された場所そのものには立てない」という点は先にお伝えしておきます。それでも、あの建物群を目の前にすると「ここに110人が機材を担いで上がったのか」と思えて、見え方が変わります。
長崎市内が広く使われました。亀山社中記念館やグラバー園など、いまも定番の観光地がそのまま登場します。ほかに『悪人』(2010)、『あなたへ』(2012)、『君が心をくれたから』(2024)も長崎市が撮影地に入っています。
軍艦島ツアー完全ガイド(乗り場・料金)/亀山社中と坂本龍馬の長崎
こちらは撮影ではなく、風景のモデルになった作品です。県や市の公式でも「ロケ地」ではなく「モデル地」と表記されています。
長崎市がまるごとモデルになった作品で、いまも巡礼に来られる方が絶えません。鍋冠山展望台、グラバー園、グラバースカイロード、大浦展望公園、オランダ坂、長崎水辺の森公園、石橋電停あたりが中心です。
グラバースカイロードは、斜面を登る無料の斜行エレベーター。地元の生活路ですが、作品を知っている方にはたまらない場所のようです。
『けいおん!』『聲の形』の山田尚子監督の作品で、長崎県がモデル地です。長崎市内ではどんどん坂、小曽根乾堂通り、グラバー通り。市外では黒島天主堂(佐世保市)、旧五輪教会堂(五島市)などが挙げられています。
どんどん坂は東山手の石畳の坂で、雨の日に水が「どんどん」流れることが名前の由来と言われます。
冒頭で触れたとおり、舞台は外海。遠藤周作文学館、出津教会が中心です。当社の世界遺産・教会巡りコースでご案内している範囲です。
長崎市内から離れるため、当社の貸切タクシーではご案内が難しいエリアです。行き方だけまとめます。
| 作品 | 場所 | 行き方 |
|---|---|---|
| 舞いあがれ!(2022) | 五島市・新上五島町 | 長崎港からジェットフォイル・フェリー |
| この夏の星を見る(2025) | 五島市(鬼岳ほか) | 同上 |
| 劇映画 孤独のグルメ(2025) | 五島市(堂崎教会ほか) | 同上 |
| 坂道のアポロン(2012・モデル地) | 佐世保市 | JR快速シーサイドライナー 約1.5時間 |
| GAMERA -Rebirth-(2023・モデル地) | 対馬市 | 長崎空港・博多港から |
五島方面へ行かれる場合、長崎港の乗り場まではお送りできます。朝の便は早いので、大きな荷物がある方は特に使い勝手がいいと思います。
なお島原鉄道の大三東(おおみさき)駅(『レンタル・ファミリー』2026年)は、ご希望があれば当社でご案内できます。海に一番近い駅として知られる無人駅で、満潮と天気が合うと、ホームの向こうが一面の海になります。長崎市内から片道1時間半ほどの行程になりますので、半日〜1日のご相談としてお受けしています。
ロケ地・モデル地は市内に散らばっているうえ、坂と一方通行が多いのが長崎です。歩いて回ると、想像の倍は疲れます。
作品名を教えていただければ、その作品に出てくる場所を優先して組み直します。「この1カットの場所に立ちたい」というご要望が、いちばん張り合いがあります。
ロケ地や舞台をめぐるお客様から、いちばんよく聞く言葉があります。「長年気になっていた場所に、やっと来られた」。これを言っていただけたときが、私はいちばん嬉しいです。何年も心の中にあった風景の前に、実際に立つ。そのためにわざわざ長崎まで来てくださっているわけですから、こちらも「近くまで」ではなく「その場所まで」お連れしたいと思っています。
もうひとつ気づくのは、皆さん「写真の構図」を持ってお越しになることです。作品のあのアングルで撮りたい、と。坂の街なので、同じ場所でも数メートル立ち位置が違うと画が変わりますし、車を停められる場所も限られます。事前に「この作品のこのシーン」と教えていただければ、停める場所から逆算してご案内できますので、ご予約のときに遠慮なくお伝えください。
市内に点在するスポットを、坂を歩かずに回れます。時間帯や順番は、ご希望に合わせて調整します。
市内に点在するロケ地・モデル地を、坂を歩かずに。
作品名を教えていただければ、順番から考えてご案内します。
※ ロケ地・モデル地の情報は、長崎県観光連盟および長崎市公式観光サイトの公開情報をもとにしています。作品によっては非公開の撮影地や、上陸・立入ができない場所があります。